コ―タローの店舗併用住宅

シンクロ・フードの営業担当者・Nさんが事務所に来られた。シンクロ・フードは、店舗デザイン.comというサイトを運営している会社である。

 

色々な店舗デザイン事例がそのサイトにあるので、私は以前から見ていて知っていた。Nさんは、関東エリアで店舗を設計施工できる会社がないか探していたところ、コ―タローを見つけてくれたのだ。

 

Nさんがコ―タローに興味を持った点は、店舗併用住宅の施工事例が多いことである。それは、他の会社にない特色であると、Nさんは言う。

 

店舗というと、飲食店・販売店・美容店を思い出されるが、バレエスタジオ、多目的スタジオ、絵画教室・絵画アトリエといった用途が、コ―タローにはある。店舗デザイン・comに掲載されている店舗とは、少し異なる用途であり、それがまた魅力的らしい。

 

確かに考えてみると、個性的な店舗併用住宅を作れる会社は、あまりない。店舗デザイン会社、意匠設計事務所、住宅メインの工務店、どの会社にも、ちょっとした障害があるからだ。

 

店舗を作ってくれる会社は、いくつか種類がある。しかし、開業にあたり融資を受けるとなると、設計と施工ができる会社の方が、好都合なのだ。なぜなら、計画の初期段階で、融資の提出資料である概算見積書が、必要になるからだ。その作業がスムーズにできるのは、設計と施工ができる会社に限られてくる。

 

また、店舗を設計から施工までできる会社はたくさんあるが、その会社が店舗併用住宅を作れるかというと疑問である。

 

住宅には、性能、耐久性、居住性が求められる。構造計算は当然必要で、2018年からは、外皮計算もしなければならなくなった。今後、打ち合わせの中で、光熱費や温熱環境のシュミレーションが求められる。店舗デザインとは異なる難しさが、住宅にはある。

 

コ―タローの仕事の中心は、住宅である。今まで、上記のような作業は当然の流れの中で行ってきたし、新しい取り組みの準備もしている。だから、店舗併用住宅を+αの部屋がある住宅として作ってきた。

 

バレエスタジオのある住宅(幸手のスタジオ)は、二階に大きな趣味の部屋のある住宅として設計した。

 

多目的スタジオのある住宅(戸塚のスタジオ)は、広いお庭に大きな茶室のある住宅として設計した。

 

絵画教室・絵画アトリエのある住宅(中青木のアトリエ)は、大きなリビングが複数ある住宅として設計した。

 

パン雑貨店のある住宅(塚越の家)は、まちのダイニング・キッチンのある住宅として設計した。

 

梨販売店のある住宅(東松戸の家)は、大きなリビングがもう一つある住宅として設計した。

 

コ―タローは店舗デザイナーではないのである。

 

店舗デザインは、広告宣伝業界に近い。だから、店舗デザイン会社は、コンセプトやマーケティングという言葉を使う。差別化し、売れる店とは何かを突き詰めているからだ。そして、コンセプトに沿って、内外装のデザインを決定し、PR活動や販促媒体とも連動させる。お店のあらゆる要素が、それに合う形に整えられていく。だから、店舗デザイン会社のお店づくりには隙がない。

 

しかし、この発想は、個人の方が長年温めていたお店の夢を形にするには、あまり適さないのではないか。まず、コンセプトやマーケティングという言葉が聞きなれない。やる気があって始めたにもかかわず、考え込んでしまいそうだ。

 

また、デザイナーが提案するコンセプトを認めてしまうと、コンセプトから外れてしまうアイデアは、諦めたり、変更しなくてはいけない可能性がある。デザイナーは洗練させたほうが良いという前提で行っているのだから当然である。しかし、個人でお店を始めようとするお客様は、不揃いで雑多なアイデアをたくさんお持ちであることの方が普通なのではないか。

 

私は、コンセプトをもとに整合性のとれたデザインにした方が売れるという前提を本当にそうだろうかと少し疑っている。

 

必要条件を整えるために、必要十分条件を犠牲にしているような気がするからだ。必要十分条件とは何か、それは、お客様の想い、やる気、勢い、諦めない気持ちである。ある一定以上のクオリティーがあれば、必要条件の不完全さなど、それらでいくらでも補えるのではないか。

 

私がこれまで携わった店舗のお客様は、皆、コンセプトなど語らず、始めている。

 

やりたいことが、お客様の中にしっかりある。私もコンセプトは何か?と聞いたこともない。お店のヴィジョンはお客様の中に確かにある。それは、上手く言葉で表現できず、語られたとしても、キャッチーな言葉ではないことの方が多い。コピーライターでもない訳だから、そんなことを私は期待していない。

 

むしろ、それを語る本人が、生き生きしていることが大切であり、これで良いのだと思っている。

 

コ―タローは、そんな、まちを明るく元気にしてくれる方々の力になりたい。

 

⇒店舗併用住宅

⇒店舗

 


品揃え豊富、ワイン・バーがオープン

南越谷のワイン・バー ナナ・ヴァン

先日、南越谷のワイン・バーがオープンしました。

さっそく、仕事帰りに立ち寄ってみました。

 

引き渡しの時とは大違い、すっかりお店らしい雰囲気になっていました。

 

お店の雰囲気を作っているのは、もちろん設計者の作った内外装も貢献していますが、大部分は、オープンするまでに整えられた家具や食器やその他小さなアクセサリーなのではと感じられます。訪れたお客様が、見たり触れたりするのも、それらであり、思い出されるものの中心にあるのも、それらだからです。

 

食器は焼き物の産地で購入したこだわりの品々だったり、橋置き一つとっても考えられた商品をセレクトしたり、小さな一つ一つの選択が、単なる好みではなく、店主であるKさんのこれから来てくれるお客様への約束なのだと思わせてくれます。

 

帰り際に、若い5人組のお客様が入り、お店は急ににぎやかになりました。

早く、地元住民や会社の方に愛される行きつけのお店になってくれることを願っております。

 

 

⇒南越谷のワイン・バー

 

ナナ・ヴァンHP

https://nana-vin.com/

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ナナ・ヴァン オープン チラシ
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祭りの眼差し

みさと団地の祭り
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越谷のアルチザン

越谷市でTシャツのデザインと製造を行っているNさんの工場を訪問した。

 

越谷といっても、最寄りの駅は東武スカイツリー線の大袋駅で、駅から歩いて15分ほどの場所にその工場はあった。市街化調整区域らしく、周りはほとんど畑で、農家の家がぱらぱらとある程度であった。

 

そのため、工場は、天井高さがあり、かなり広い。その中に、作業机とパソコンとTシャツにプリントする機械とその乾燥機が無造作に置かれており、いかにももの作りの現場という感じであった。

 

倉庫を工場として使っているので、空調設備が整っていない。扇風機と冷風機でなんとか、暑さをしのいでいる。初めてお会いするNさんも、Tシャツにハーフパンツにサンダルにタオルという格好だった。

 

Tシャツ作りは天職だと熱く語るNさんとは話が弾んだ。Nさんの会社名はアルチザンという。アルチザンとは、近代以前の伝統工芸品を作る職人のことを意味するフランス語だそうだ。今設計している木造倉庫に中二階を作る話をしたら、とても興味を持ってくれた。

 

Nさんの工場も、中二階を作り二階をクリエイティブ系の職業の方に貸したらよいのではないかと提案した。そうすれば、毎月の賃料の負担も軽減でき、別の仕事の方と交流ができる。更に、Tシャツを作っている一階の天井高さが抑えられ空調効率も良くなる。場合によっては個室化することもできる。

 

Nさんには是非ご活躍していただき、中二階計画を実現されることを願っている。

 

株式会社アルチザン

http://www.artisan-works.net/


三郷の刀剣研師

自分で作った新聞を配っていると、印象的な人物にときどきお会いする。

 

彦成地区に水色の外壁の住宅が、奥まったところにひっそり建っている。木の看板が掲げられ、刀剣研ぎと書かれている。

 

実は近くに包丁を一回300円で研ぐ仕事をしているお父さんがいらっしゃた。その記憶があったので、同じような仕事をしているところなのかなと思ったが、違っていた。

 

インターフォンを押すと、中から若い男性の方が出てきた。話を聞くと、なんと刀を作る最後の工程である刀研ぎを2階でしているという。

 

「和こころ」とうサイトで紹介されているという。

さっそく戻って調べてみた。

 

世界にたった一本しかない刀を研磨する作業には失敗が許されません・・・・

世界で1振りしかない刀を託される責任感は凄まじい重圧・・・・

 

と書かれている。

確かに、刀研ぎは、後戻りややり直しが効かない作業である。

 

そんな厳しい作業の中にも、自己鍛錬の要素を自分で見出し、覚悟を決めて仕事に向き合っている姿勢が素晴らしい。

 

とかく世間では、仕事は楽しくと言われがちだが、私は自分の仕事でそのように思ったことは一度もない。

仕事はしんどいのが当たり前、それをやり抜く中で、自分だけのやりがいや達成感を見つけていくのが普通なのだと思っている。

 

 

和こころ 佐々木卓史(刀剣研師)

http://wakokoro.org/%E4%BD%90%E3%80%85%E6%9C%A8%E5%8D%93%E5%8F%B2%EF%BC%9C%E5%88%80%E7%A0%A5%E5%B8%AB%EF%BC%9E/


改修工事の経験と勘

倉庫の改修工事に向けて、プレカット用の図面の作成に取り掛かった。

 

小工事とはいえ、中二階を支える構造部材が多数必要になる。

材料を用意し、後は大工さんにお願いすればできるというものでもない。

コストを抑えるためにも、大工さんの工事が無駄なくスムーズに行えるように、こちらで準備をしておく必要がある。

 

改修工事は、既存の建物に合わせて作らなければならない難しさがある。

古い建物は、施工精度が良くなかったり、変形していたり、歪んでいたり、部材が痩せて少し寸法が小さくなっていたりする。

 

木材は、0.5mmサイズが合わないと、ハンマーで強くたたかないと入らない。

1.0mmサイズが合わないで、無理やり入れると、どこかで割れが発生したりする。

3.0mmずれていたら、絶対入らないから、丸ノコで再加工が必要になってくる。

そのような物である。

 

だから、図面作成の前の段階で、現地調査をきちんと行わなければならない。

 

そのあと、作り方を考慮し、図面作成に取り掛かるわけである。

その時のポイントは、あらかじめ工場で機械加工してしまうところと、既存建物に合わせ、現場で大工さんに加工してもらうところを、使い分けることである。

そのほうが、変な隙間が生まれず、すっきりした仕上がりになる。

 

自分で採寸した精度と予想したクリアランスが適切かどうかは、工事をしてみればはっきり分かる。

経験と勘の見せどころなのである。

 

 


健康は断熱から

愛知県の小学校で、小学生が熱中症で亡くなるという事件が起きた。大変悲しい出来事である。

 

これによって、どこの小学校でも、エアコン設置が、ますます急がれることとなる。しかし、断熱性能の悪い建物にエアコンを設置することは、エネルギー効率があまりにも悪い。外部環境の影響を受けやすいからだ。

 

白いコンクリートの建物で象徴される昔からある学校は、壁に断熱材がない。サッシはアルミと5mmのシングルガラスでできており、熱がとても逃げやすい。私が住んでいるURのみさと団地と同じで、1970年代に作られた当時は、最新の建物だった。しかし、新しい技術と新しい考え方が生まれ、今では、温熱環境的には、最低の仕様になっている。

 

今後、電気代は小項目が追加され、高くなる傾向にある。それは原発の事故処理の費用負担を捻出するためである。そのような状況下で、エアコンを設置すればいいという判断は、賢い設備投資ではない。まずは、断熱工事が最初だと思う。

 

しかし、私たちが慣れ親しんでいる住環境が温熱環境的に良くないので、そのような意見が、父兄や先生から出ることはまずない。自分とは関係ないと判断されてしまう建築技術の専門知識が、一般の方の耳に届くこともない。多くの情報に囲まれ、それ以外のことで忙しい。

 

だから、私は建築士として、皆さんの身近な住環境を改善したいと、改めて思っている。そのために、近い将来、みさと団地をリーフォームして販売する活動を目標にしている。もちろん、住み手の好みに合わせて設計することも可能だ。

 

この温熱環境の違いは、体感しないと分からない。これは、体の健康とも関係している。だから、実際体験できるモデルケースが必要だ。そして、体験者の声が広がり、地域社会で、省エネ、健康、働き方、暮らし方について見直す動きが生まれることを願っている。


できるかもしれない心意気

今日は、近くで行う予定になっている倉庫の改修工事の図面作成を行った。

 

この倉庫の持ち主は、そこを仕事の作業場として使っている。

天井の高い倉庫なので、以前から中二階を作りたいと思っていたそうだ。

しかし、仕事が忙しく、すっかり忘れてしまっていたところに、私が現れ、私と話をしているうちに、やれるかもしれないと思うようになってきたのだ。

 

たいていの人は、仕事や家庭のことで、頭は一杯だ。

住まいの困りごとに気付くことはあっても、忘れてしまうことが多い。

考えても、解決方法が分からない、そのストレスから解放される方法は、忘れることだ。

 

身の回りの環境は、誰かが親切に先のことを考え知らず知らずのうちに用意してくれていることが多い。

それは、有難いことであるが、ちょっとした出来事に対応できる能力を学習する機会を失っているとも言える。

 

上手くできなくても、なんとか自分でやってみればできるかもしれないという心意気は、持っててもらいたい。

 

幸い、三郷市にはビバホームがある。

プロも買いに来る品揃えである。

カットサービスの対応も良くなった。

電動工具も、しかりしたものが手ごろな値段で手に入る。

 

中二階の工事を依頼してきたお客様は、コ―タローに中二階の床下地とそこに上がる階段を作らせ、後は、自分で少しずつ、使い勝手をよくしていこうと考えているらしい。

今後が楽しみである。


三郷の水害

災害時用の木製の舟
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住環境は社会福祉

昨年から、三郷市を6つのエリアに分け、自分で作った新聞を配布して回っている。

 

コ―タローのことを知ってもらうのが目的だが、フィールドワークのような側面もある。おかげで、三郷市のまちの特徴を、エリアごとに思い浮かべることができるようになってきた。

 

私はこれまで職人と設計の仕事しかしたことがない。

恐る恐る、この活動を始めてみて、意外なことが分かった。

在宅している方は三割から五割で、そのうち結構な割合で、玄関まで来て私の話に耳を傾けてくれる。そして、白黒で手書きのA4一枚の私の新聞を受け取ってくれる。怪訝な顔をされたり、断られたりする人がほとんどかと思っていたが、その割合はとても少ない。

 

更に、最近分かったことがある。

それは、ほとんどの方が、設計事務所が何をする会社か知らないということだ。知っている方でも、新築の建物を作る人だと思っている。

 

だから、私は、次のように説明するようにしている。

 

新築だけでなく、水周りの設備機器の交換や小さなリフォーム工事もやります。

建物の図面を作るだけでなく、職人さんを現場に呼び、工事まで行います。

例えるなら、一人ゼネコンみたいなものです。

 

モダンデザインは、都市の住環境の改善を目的で始まった社会福祉活動だと思っている。中川沿いの住宅街を歩きながら、自分に何ができるか、その答えを探している。


選択は力

西日本の災害のことが気になって、広島にいる友達に電話をしてみた。

広島の内陸部に住んでいるの方なので、少し心配であった。

 

裏山が崩れたが、幸い、住居に被害がはなかったとのこと。

土砂崩れで封鎖された道路が多く、遠回りして仕事に行ったりしているらしい。

 

ニュースを見て知ってはいたものの、身近な友達から話を聞くと、生々しい光景が目に浮かぶから不思議である。

 

三郷市は今日も平和である。

広島もついこないだまで同じような感じだったのだろう。

 

世界で起きている出来事には、メッセージがある。

私たちに選択を求めている。


水害に強い住宅

災害時の避難小屋

地球温暖化ガスの排出量削減が世界の課題になり、屋根に太陽光パネルを設置し、高効率な設備機器を搭載した住宅が、これからの主流になってくる。

 

それと同時に、断熱性能のグレードを上げ、気密性能のある住宅が求められる。自宅で電気を作り、エアコンの使用を最小限に抑える必要があるからだ。そのほうが、健康にも良い。

 

しかし、今回の豪雨で、そのような住宅の意外なデメリットが見つかった。

高気密住宅というのは、一方で浸水すると、壁や床の中から、水が抜けにくい住宅である。気密性能を上げるために、室内側の壁にビニールを張るため、壁面に水を貯めてしまうのだ。

どんなものにも、メリットとデメリットがある。

デメリットをできるだけ少なくする工夫が必要だ。

 

水に強い素材と言えばコンクリートである。

木材のいろんな活用事例が生まれてきているが、地面の中や、地面に近いところは、相変わらずコンクリートのままである。

 

そこで、水害に強い住宅を考えてみた。

一階がコンクリート造、二階が木造の住宅である。

 

コンクリートの建物には気密性がある。

開口周りの隙間をなくせば、かなりの気密性がある。

更に、コンクリート打ちっぱなしの室内仕上げが楽しめる。

外断熱にすれば、室内側はコンクリート打ちっぱなしにできる。

万が一、浸水しても最小限の被害で済む。

 

今、災害用の避難小屋を計画している。

 

相談された奥様のご主人が寝たきりなのだ。

そのため、日本家屋が建つ広い敷地の中に、新たに小さな二階建ての建物を建設し、災害の時に、一時的に避難するというのだ。

電気はすでに敷地内にある太陽光パネルから供給される。

 

「自分の家は自分で作る」ということは、「自分の身は自分で守る」ということだと、改めて思った。

 


三郷のハザードマップ

岡山県倉敷市の小田川の堤防決壊により浸水したまちの様子をニュースで見た。

 

一階のテラス窓の上のほうまで水が来ている映像が流れていた。そこから判断すると、地面から2.2mの高さまで水が来ているに違いない。

 

ネットで検索したところ、西日本の7/8夜までの三日間の総雨量は300~600mm、つまり、一日100~200mmの総雨量ということになる。

 

私が住んでいる三郷市も河川に囲まれた地域である。

近くには江戸川、中川、範囲を広げると、利根川、荒川、綾瀬川、元荒川と、いくつもの川が流れている。

そのうちのどれかが決壊した時どうなるのだろうかと気になって、三郷市ハザードマップを調べてみた。

 

江戸川と利根川は三日間で318mm、荒川は三日間で548mm、中川とその他は二日間で355mmで決壊したりあふれたりする可能性があると、書かれていた。つまり今回の西日本と同じ雨が三郷市周辺に降ったら、三郷市は浸水するということが、三郷市発行のハザードマップにとても静かに書かれている。ほとんどの地域が1m以上の浸水、2m以上のエリアもある。

 

今現在、三郷市内に建設されている住宅の中に、災害を想定して計画されている住宅はあるのだろうか。地震と水害は三郷市内で住宅を作る上で、避けて通れないテーマの一つになりそうだ。

 

 

三郷市ハザードマップ

http://www.city.misato.lg.jp/kouzui/hzm/img/hzm.pdf

 

 


温暖化と水害

ニュースから流れる西日本の豪雨の被害は、目を覆いたくなる光景ばかりである。

冠水したり倒壊している建物を見るたびに、自分が作った建物だったらと思うとパニックになりそうだ。

 

この豪雨は、地球温暖化と関係していると専門家は指摘している。

地球温暖化によって、気温上昇とそれに伴う水蒸気量の上昇が発生し、極端な豪雨が頻繁におこりやすくなるそうだ。

 

崩れた道路や擁壁、側溝から噴き出す雨水、冠水した住宅、裏山の土砂崩れに巻き込まれた建物、これらは全て法律や条例で決められた基準を満たし設計されたものである。

 

国の基準が変わるのには時間がかかる。

国の基準は最低基準だと考える必要がある。

 

設計者の判断が、ますます重要になってくる。

 

 

 

 


反省とねぎらいの時間

南越谷のワイン・バー ナナ・ヴァン

細かい補修が終わり、掃除と片付けを行った。

 

掃除の手を動かしながら、仕上がったものの出来具合を、自分の目で一つ一つ確認している。設計から施工まで行った者だけが味わえる時間である。

 

そして、打ち合わせから工事までのプロセスを振り返り、「あの時の判断は良かった」とか「あれは良く出来た」とか「あの時こうすればよかった」など、反省とねぎらいをしている。

 

この時間が、私は一番好きである。


トラブルもクリア、セルフ塗装終了

南越谷のワイン・バー ナナ・ヴァン
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やってみると見つかる自分の好み

セルフ塗装工事 ナナ・ヴァン

本日、セルフ塗装工事を、お客様であるKさんに行っていただいた。

厨房の天井を黒いペンキで塗っていただく工事である。

塗装工事は、客席の天井を塗ったことがあるので、今回で二回目である。

その甲斐あって、Kさんは一回目より慣れてきたように見える。

 

セルフ工事を取り入れている理由は、いくつかある。

一つは、お客様の努力と工夫次第でコストを抑えられる選択肢を用意してあげたいということ。二つ目は、お店や家を、もっと自分自身のものとして育て上げ、愛着を持てるプロセスを提供してあげたいということ。

大きくこの二つの理由がある。

 

セルフ工事を実際やり始めると、恐る恐る始めていたお客様が、段々コツをつかんできて、もっとこうしたいという想いが生まれてくるようで、設計者の意図と違った方向にどんどん進んでいくことがある。

 

お客様が楽しみ満足されているのでお任せしているが、実は、設計者から見ると、カチっとしたかっこい形や、繊細で微妙な色合いを、自分の肌や好みに合うように、馴染みのある違った色や形に、成形し直しているように見えている。一体、なぜなんだろうと、ずっと思っていた。

 

買ったばっかりの靴は、硬くて履き心地が悪い。また、靴だけ新しくピカピカで目立っておかしい。そこで、小さい頃、新しい靴を踏んだりねじったりしたことがあった。履き心地と見た目、この二つの違和感を自分の中で解消しようとしている。恐らく、そのような行いに近いことなのだろうと、今は理解している。

 

今回のセルフ工事は、黒く塗るというあまり個性のない消極的な工事である。しかし、工事が進むにつれて、木製のドア、カウンター天板、合板の塗装工事をご用意している。木目の浮き上がる程度や色の濃さなど、お客様の好みと関係してくる工事である。今回は、黙々と黒いペンキの塗装に励むだけのKさんが、次第にどんな自分の色を見つけるのことになるのか、楽しみである。


お店と住宅

今回、予算の都合もあり、自分でお店の解体することにしている。

本当の理由は、どこまで壊すか見極めることと、壁、床、天井などがどのように作られているか把握するためである。

 

ある程度、予想して図面は書いているが、違っていた場合、設計を変更しなければならない。改修工事は、そのような難しさがある。

 

案の定、解体してみると、予想と違った作られ方をしていた。

明らかに、きちんとした大工さんの仕事ではない。部材の取り付け方が、普通ではないからだ。また、使っている材料も、どこかの現場のあまりか、解体したものを再利用しているようである。

 

通常、105角位の柱を910mmピッチで配置し、その間に30mm厚の間柱を設けたりする。そうなっていないのだ。土台もなければ、コンクリートの立ち上がりもない。柱材を直接タイル床に立てている。だから、柱脚が雨水を吸って腐食している。その固定に使っているスチールのアングルも錆びてボロボロである。

 

住宅ではありえない作り方である。

このようなお店は、少ない予算で早くお店を始めようとするオーナーとそのような条件で工事を引き受けてしまう工事業者の、ある意味、幸運な出会いと信頼関係で、簡単に実現してしまうのだろう。

 

新築住宅がどんどん厳しくなっていく中、小さなお店の改修工事は、法的な規制や手続きが緩いので、知識と技術がない工事業者が店舗改修工事へと進出しているのではないかと思われる。

 

お店が住宅と違うのは分かるが、長くその場所で続いていくためにの最低限の耐久性は必要であろう。しかし、お店の場合、撤退ということも考えられる厳しい世界でもある。

 

そのため、住宅のような本物志向も場合によりけりで、どちらかというと、しっかりした仮設的な作りで、表面にセンスの良い仕上げ材をバランスよく配置して、より集客に貢献するのが、お店づくりにおける設計者の役割だとも言える。


モルタル仕上げの魅力

戸塚のスタジオ
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写真の中の彼女の眼差し

染服みのり

牛田みのりさんに会いに行きました。

 

みのりさんは、染色作家として活動されていた方でした。

私が以前住んでいた街で開催されていた展覧会で知り合いました。

その頃、私は型枠大工をやっており、みのりさんのようなクラフトマンシップ溢れる方に憧れておりました。

 

今回の展覧会は、彼女が所属していた奥田塾という染色学校が主催するものです。

以前見たことのある彼女の作品以外にも、初めて見る彼女のノートや日記が多数飾られており、エネルギッシュに生きた痕跡として、私の胸に熱く語りかけてくるのでした。

 

目を見開いてこちらをじっと見る写真の中の彼女は、私に「強く生きろ」と言っているようでした。

 

染服みのり
http://www5a.biglobe.ne.jp/~neilo/
奥田塾
http://www.okudaprint.com/

染服みのり
染服みのり

デザインは課題解決

今回も合板を使い、ワインの似合うお店を作ることになりそうだ。

今までの仕事の半分以上は、合板仕上がどこかにある。

それだけ重宝している材料である。

 

一般的に、下地材として扱われる材料なので、普通の工務店は使わない。使ったとしても、押し入れや納戸などのバックスペースである。

 

デザインが得意な設計事務所で働いた経験がある私は、主要な居室、家具、建具などにも使うことがある。

 

コ―タローは、自由に材料の使い方を考え、検討し、魅力があり、色んなことが同時に解決できると思ったら、既成概念にとらわれず、新しいやり方を採用する。

 

一般的に、デザインは、色や形のことだと思われている。しかし、それはデザインの一側面でしかない。むしろ、美しくなされた課題解決のことだと思ったほうがよい。

 

 

 

ラーチ合板の事例

⇒幸手のスタジオ

⇒戸塚のスタジオ

⇒塚越の家

 

ラワン合板の事例

⇒蕨_中央の家

 

シナ合板の事例

⇒中青木のアトリエ

 

 


低予算の力

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設計プロセスの主役はお客様

越谷のワインバーの打ち合わせが始まった。

建築士との設計打ち合わせは、Kさんにとって初めての体験なので、不安と期待の入り混じったお気持ちなのではと思う。

 

今回のような10坪のお店の改修工事でも、私は打ち合わせを簡易的に済ますようなことはしない。十分時間をかける。それは、設計者がお客様の声を聞き洩らすことのなく、お客様が納得しながら計画が進むようにするためである。

 

計画の始まりは、お客様の頭の中にあるイメージである。

そのイメージには、精確な寸法がないことが多い。

色々なことが実現できるという期待のもと、そのイメージは出来上がっている。

だから、設計者が図面にしてあげると、気がつくことがある。

良くも悪くも、思っていたことと違うことが見つかる。

 

今回も限られた大きさの中で、以前と違うお店の使い方を試みる。

椅子やテーブルの配置やカウンターの高さ・奥行き等は、重要なポイントである。

また、ワイン・セラーや冷凍庫といった設備機器が使いやすくレイアウトできるかも、重要なポイントである。

 

出来上がった図面を見て、お客様自身も考え始める。

思っていた通りのところ、思っていたのと違うところ、気がつかなかったところ、色々ある。

そのようなものが、目に見える形で目の前にあると、頭は自然と働きだすものなのだ。

図面で分かりにく場合は大きな模型を作る。

 

そこで生まれたお客様の声を、また聞き洩らすことなく設計に反映させる。

そして、再び目に見える形にする。

設計の打ち合わせは、その繰り返しである。

そのプロセスを端折ることはしない。

 

自分の想いが目の前で確実に形になっていくことを、お客様は感じられることであろう。そのような設計プロセスを、私は心がけている。家づくりやお店づくりの主体は、あくまでもお客様なのである。


徹底的にコンストラクション、どこまでのコンストラクション

お店の改修工事はスピードが求められる。

お客様のために、設計と工事期間中の賃料をできるだけ抑え、早くお店の営業を始めさせてあげるためである。

 

店舗専門のデザイン会社は、2週間程度の設計と2週間程度の工事で完成させてしまうと言うから驚きである。注文住宅を作り続けてきた私からすると、かなり現場に無理をさせているのではと推測してしまう。「二度とこんな工事はしたくない」という職人の心の声が聞こえてきそうである。そのような現場は、関わる人を疲弊させる。だから、良くしようとする意欲を殺がれるので、良いものができない。

 

現場に無理をさせると、どこかにしわ寄せがくる。

それは、結果としてお客様のためにならない。

持続可能な社会というのは、突き詰めると、作り手と使い手の心の在り方なのだ。

 

私の会社の英語名はkotaro design and constructionとした。私の仕事はbuildではなくconstructionである。それは、しっかりとした図面を作成し、それをもとに精確に建物を作ることをいう。図面はお客様の要望を形にしたものであるだけでなく、工事金額の根拠でもある。だから、小さなお店の工事とはいえ、数枚の絵のような図面的なものだけで、見積書を作る工事業者は、不誠実に思えてしまう。

 

お客様と十分な打ち合わせを行い、それをもとに図面を作成し、それをもとに金額を算出をし、余計なものにお金をかけず、納得の金額で工事契約をおこなう。後は、その図面をもとに、手戻りのないスムーズな工事を行う。そして、ところどころにセルフ・ビルドを取り入れ、お客様に楽しんでいただく。

 

これは、これからも変わらない建物づくりの軸である。


コンセプトの弊害

Kさんが事務所に来られた。

 

Kさんは、2年程前に埼玉県創業ベンチャー支援センターで開催されたセミナーでお会いした方である。セミナーで何回かお会いし、話をするようになり、親しくさせていただいていた。初めてお会いした時から、ワインのお店を始めたいと夢を語っていた。

 

そのKさんが、物件を見つけ、お店の設計の相談に来られたのだ。

それほど大きくない10坪の居抜き物件である。

図面で見る限り、トイレ、手洗いと厨房はあるので、大がかりな給排水工事は発生しないようである。

 

しかし、現在のお店を実際見てみると、現状のままで使える部分があまりない。まず、以前、鶏肉料理の居酒屋だったので、新しく始めるワインのお店の雰囲気に合わない。更に、安く簡単な工事でなんとか居酒屋を始めたようなので、作りが悪い。

 

このような場合、二つの方法がある。

一つは、既存の壁や設備機器を全て解体処分し、まったく新しく作り直す方法である。もう一つは、使える部分だけ残し、新しい材料を付け足していく方法である。

私は、今回、コストのことも考え、後者を選んだ。

 

全て解体してしまうほうが、設計作業は楽である。ワインのお店にあったデザインを事務所で考え、解体業者には「全て撤去しろ」と指示し、空っぽになったテナントに図面通りの物を作ればいいからだ。

 

できるだけ残す方針にすると、どこを残すか、どこを撤去するのか見極める必要がある。また、残したものに合うデザインと設計をしなければならない。だから、しっかり、現状を把握する必要がある。だから、現場に行くことも多くなるのだ。

 

店舗専門のデザイン会社は、工期が短いこともあり、全撤去してしまうことのほうが多いのではないだろうか。お店のコンセプトをしっかり形にしようとすると、合わない既存のものは全て撤去するという結論に至るのは当然のことである。しかし、その分、解体作業手間、解体処分費、新しく作るものの材工費がかかってしまう。

 

私はコンセプトというものをあまり重視しない。コンセプトに縛られるのも良くないと思うからだ。設計プロセスの中で、元々あるものの特徴を明らかにし、その可能性を探り、活かし、お客様の望んでいるほうに寄せていくようなやり方をいつも心がけている。

 

今、目の前のお店でそれが何かは、まだ分かっていない。しかし、現状を理解し、試行錯誤していると、だんだん浮かび上がってくることだろう。


表面の大切さ

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庭の生産力

仁蔵のBBQテラス

チラシ配りの最中、玄関先で相談を受けた。以前からバーベキューやお茶が楽しめる雰囲気の良いウッドデッキが欲しかったそうだ。また、物干し場が狭いので、それも何とかしたいらしい。

 

お庭に案内されると、そこはとても広い畑になっていた。

まるで、畑の中で暮らしているようだ。

近所の農家の方に教えてもらっているうちに、全面畑になったそうだ。

お店で野菜を買う必要はなさそうである。まさに半農生活である。

お米は近くの農家の方から直接まとめて購入すれば、全体の食費はかなり抑えられる。

 

また、広い畑の中に、太陽光発電設備や太陽光給湯設備も設置可能だ。屋根に置くことが多いが、地面であればメンテナンスがしやすい。井戸も掘ろうと思えば掘れる。このような住環境は、これからの住宅モデルの一つになりそうだ。

 

立ち話とお庭の見学という数分足らずの情報だったが、お客様の期待を超える提案をしてみたい。

 

 

 

 


病院のような住宅

今日、彦成地区にお住まいのTさんとお話しする機会があった。

 

寄棟の立派なお宅に住まわれ、広い敷地には蔵と納屋が建ててある。

珍しいことに、北側の空いている敷地に、鉄骨の架構があり、その上に太陽光発電設備が設置されている。パナソニック製で、発売されて、すぐに購入したそうだ。Tさんのご主人が自宅療養中で、その機械の電源となっているそうだ。

 

Tさんは、一般の方と違う独自の視点をお持ちであった。

ご家族の健康上の特殊な事情があるため、災害対策を人任せにできないからであろう。

建築士である私に、アドバイスをしてくれた。

 

三郷市は河川に囲まれており、水害の危険性がある。

一般的に体育館を避難所とする自治体が多いが、多くの人が集まり、感染症の危険が高い。また、そこまで避難できるかどうかも問題である。

だから、自宅のほうが安心なのだ。

そのため、特に、ご高齢の方には、病院のような住宅が必要である。

もちろん、自宅にある医療機器が動くような電源が必要である。

また、上階が避難階になるので、そこへ移動できる昇降装置も必要である。

 

病院のような住宅というとても良いキーワードを聞かせていただいた。

Tさんからは、北側の空いているスペースに、避難小屋を計画できないかと相談を受けた。事務所に戻り、考えてみようと思う。

 

 

 

 


わたしの情報が一番重要

近所の方から電話があった。

 

雨樋の調子が悪いので見てほしいとのこと。

住所をうかがうと、同じ彦成地区である。

自転車でご自宅に向かう。

 

私道に戸建住宅が複数並ぶ、典型的な建売分譲地の一番奥にあるお宅だ。

築30年程だろうか、外壁が改修されていた。

こういった古い建売住宅は、何十年もたつと不具合が生じるのは仕方がない点もある。

 

問題は、工事会社とのつながりがなくなってしまうことだ。

特に、木部の腐食の原因となる水や湿気に関係する不具合は、放っておくと、直すのが大変になってしまう。

 

恐らく、竣工当初は営業担当者もいたのだろう。

しかし、担当者が変わったりすることで、疎遠になる。

そして、気になることがあっても、お客様も忘れてしまう。

そんな中、私が先月から配布している住まい情報チラシ「コータロー通信」を見て電話をかけてこられたのだ。

 

お客様は御年輩の方でお一人で住まわれているようだ。

 

相談は三点。

 

一つ目は、樋の排水が宅内放流で、大雨になると地面がぬかるむ、何とかしてほしいとのこと。

 

二つ目は、裏の縦樋配管が壊れかかっているので、新しく直してほしいとのこと。

 

三つ目は、玄関下屋の横樋から大雨になると雨がこぼれ落ちてくる、ゴミが詰まっているのか心配だ、何とかしてほしいとのこと。

 

以上、三点であった。

 

内容は分かった。

恐らく、雨水浸透升を設置できれば、解決できそうだ。

そして、現場内を注意深く観察する。

 

隣地との空きが非常に少ない。

600mmはまだいい。

350mmしかない所もある。

しかも汚水升がたくさんある。

一部コンクリートで地面を固めているところもある。

配管経路がなさそうだ。

 

設備屋さんに電話をして聞いてみると雨水浸透升の直径は標準300mm、小さいもので250mm、深さは400mm。

 

汚水升の蓋をあけて、管底までの距離を測ってみる。

深さ850mmあった。

ここは行けそうだ。

 

奥の汚水升を調べる。

管底まで350mm。

これでは干渉する。

しかも、設置できるスペースがない。

 

離れたところに設置する可能性を必死に考える。

途中にコンクリート土間があり、掘削が難しい。

一層の事、サンダーでカットすることも考える。

 

だんだん、工事が大掛かりになってきてしまった。

お客様は、これほど大掛かりな工事になると、思っているのだろうか。

 

玄関下屋の樋を見てみる。

ブロック塀に登り、手を伸ばしデジカメで写真を撮ってみる。

写真を見るとゴミは全くない。

二階屋根の縦樋から雨水が放流されている。

大雨になると排水が追い付かず、溢れてしまうのだろう。

落とし口を設け、縦樋を追加すれば良さそうだ。

 

今度は、その雨水の処理である。

お客様は、放流で地面がぬかるむのを嫌がっていた。

だとすると、雨水浸透升を設置するしかない。

しかし、量水器が近くにあり、給水管が近くを通っている。

直径60mmの縦樋が下に延びてくるので、その分を空けておく必要がある。

それを考慮すると、小さな雨水浸透升でもぎりぎりである。

しかし、その小さな雨水浸透升を設置して効果があるのか疑問だ。

オーバーフロー配管は設けられないから、一層の事、穴を掘り砕石を埋設するだけでも効果は同じではないか。

それであれば、既存配管や汚水升の位置と無関係に工事ができる。

これは良いアイデアだ。

それに設備屋さんではなく、土工さんにお願いすることもできる。

選択肢が複数ある。

 

全体の方針が決まった。

これで頭の中もすっきりした。

後は、見積図面を作成し、板金屋さんと設備屋さんと土工さんに見積依頼をする。

そして、それをもとに工事内容に応じた複数の見積を作成し、お客様が検討できる分かりやすい資料にまとめるだけだ。

身近にある古い住宅の現状がとても良くわかった。

 

通信技術の発達で、調べれば沢山の情報を簡単に知ることができるが、個別の情報は、実際、足を運んで自分の目で確認するしかない。

しかも、専門家でないと分からないこともある。

私たちが一番知りたいこと、つまり、一番価値ある情報は、私たち自身の個別の情報なのである。

それは、ネットや雑誌で知ることはできない。

 

今こんな服装が流行っているという情報の中には、あなたの情報はない。

あなたにはこの服装がとても似合うと言えることの方が、インテリジェンスがある。

 

世間のお母さんは、赤ちゃんがお腹がすいて泣いているのか、眠くて泣いているのか分かるという。

ロボットは、赤ちゃんが泣いている理由は分からないだろう。

AIは入力しないと出力しない。

入力とは問い掛けることである。

問い掛けるとは耳を澄ますことだ。

耳を澄ますことができるのは人間だけだ。

だから、お母さんは赤ちゃんの気持ちが分かる。

 

風邪をひいたときの対処方法は、ネットや雑誌で調べればわかる。

しかし、今の自分の不調の原因を、それらで知ることはとても難しい。

身体の不調を感じたら、誰でも病院に行く。

今の自分の不調の原因を知り、それに合った対処方法を知りたいからだ。

 

住まいの不調を感じたら、相談できる専門機関をお持ちの方はどれくらいいるのだろうか。

建築関連団体の間でも、住まいと健康の関係が理解され始めている。

体調不良の原因が住まいにあると気付く人は少ない。

 

今月号のコータロー通信は断熱について書いた。

来月号は住宅の気密について書くことに決めた。

 

現調に一時間半ほどかかって、お客様宅を後にした。


商いの生態系の持続可能性

先月、コータローは一般社団法人埼玉建築士会に入会しました。

 

日本建築学会に次ぐ二番目に歴史のある日本建築士会連合会に属する埼玉県の団体です。建築士賠償責任保険に加入することが一番の目的だったのですが、せっかく入会するなら、自分に合った団体が良いと思い、調べたところ、日本建築士会連合会会長が三井所清典氏だったので、埼玉建築士会にしました。

 

氏は、芝浦工業大学の構法の授業の先生でした。生産系と呼ばれる研究室を持ち、建築職人の実態調査、伝統構法の再生、街並の修景、それらを総合した街作りといったことをテーマに活動をされていました。

 

当時の私は、作ることと作られるモノとその認識の関係を、大学のカリキュラムとは別に、一人黙々と取り組んでいるような学生でしたので、氏の研究テーマの背後にある問題意識など、考える余地がありませんでした。

 

自分で作る経験のないまま行われる設計教育や建築デザイン界で取り上げられる議論に馴染めず、モノ作りとして建築を学び直したい想いがあった私は、その後、職人からキャリアを始めることにしました。職人、設計者、現場監督と建築生産の各プレイヤーを一通り経験してみて、住宅のような小規模建築物を作るには、設計施工の業務形態である工務店が、自分にとって誠実で努力のし甲斐があるように感じました。

 

工務店は、建物の品質の追求と経営のバランスを取りながら、現場に伝える情報とその伝え方の役割・効果・責任を自覚せざるを得ない立場にいます。更に、引き渡し後のアフターメンテナンスも対応し続け、自分の設計した建物が後々どのようになっていくのか一生目の当たりすることになります。

 

地球規模の持続可能性ということがテーマになり、ZEH住宅やパッシブデザインといった建物単体を省エネ化していこうとするアプローチも大切ですが、その生産の在り方を考えたとき、自分がやったことが結果として返ってくる学習回路を持った組織として、工務店の意義が再認識されるのではないかと思えるのです。

 

昨年、ある工務店向けのシンポジウムに氏が参加されていました。プレゼンテーションの中で氏は工務店の家づくりの歴史を「商いの生態系」と表現していました。家や街並を生み出す住み手と作り手の経済活動を自然界の物質循環の一部として捉えた氏ならではの表現だと思いました。

 

年末、第60回建築士会全国大会が京都で開催されます。テーマは「山とまちと木造建築」です。これからの日本の未来に向けたふさわしいテーマだと思います。私は、氏の授業に出席する学生に戻った気持ちで、同時代を生きる先輩建築士の声を記憶に焼き付け持ち帰り、これからの業務に活かしたい気持ちでいっぱいです。冬の京都は初めてなので、そこも楽しみです。

 

日本建築士会連合会 http://www.kenchikushikai.or.jp


芸術とスポーツの役割

千ひろば(戸塚のスタジオ)主催のSさんから教えていただいた展覧会を見に行きました。場所は東京都美術館です。ゴールデンウィーク中とあって、上野公園は、家族連れでとても賑わっていました。

 

展覧会は一般の方の作品を集めたものでした。絵画、写真、書の作品が飾られていました。

 

私の目当ては、Jさんという方の作品です。

 

私はJさんとは会ったことはありません。ただ、事故が原因で車椅子の生活をされていると聞き、どんな作品を作られるのだろうと気になって見に来たのでした。

 

スタッフの方から話を聞くと、思い通りに動かない手を使って作品を作られているそうです。書の作品が数点飾られて言いました。「○」という文字が筆で書かれていました。

 

Jさんのことをよく知っているスタッフの方は、その作品の魅力を、Jさんが背負っている現実と重ね合わせて見ているようで、とても考え深そうに私に話してくれました。

 

私は仕事柄、芸術やデザインは好きで、作品展によく行きます。特に、60~70年代の抽象絵画は好きで、それに影響を与えた書も好きで、作品集を持っています。だから、自分なりの作品評価や判断ができると思っていました。

 

Jさん作品を見たときの私の率直な感想は、「少し子供っぽいなあ」というものでした。しかし、自分のその評価は、周りの方が良いと感じている中で、自分の一体何を表しているのだろうかと、少し考え込んでしまいました。

 

私は、今まで、解釈や知識など予備情報なしに、作品を物として向き合い、純粋に判断するように、自分を訓練してきたところがありました。それが、本質に近づく一番の方法だと思っていました。

 

しかし、それは一人の人間の抱えている現実を無視していることに繋がるのかなと思ったのです。これは、デザインや芸術を仕事し、その自由を手に入れたことで、失ってしまった何かとの繋がりのような気がしてなりません。その何かが、今の私には、まだ少し見えていません。

 

上野公園では、パラリンピック関連のイベントも開催されていました。ボッチャというスポーツが紹介されていました。弾力性のない鈍い皮のボールを投げ、カーリングのように、的の近くに自分のボールをより多く投げ入れる競技のようでした。

 

ある車椅子にのった選手が、難易度の高いとされるテクニックにチャレンジするコーナーがありました。

 

何度となく、チャレンジしましたが、やはり難しいようで、なかなか上手くいかないシーンが続きました。「惜しい」という観客のざわめきの中に私もいつのまにか一緒になっていました。そして、最後に、チャレンジ成功のときには、どこからともなく拍手がわいてくるのでした。私も心の中でガッツポーズをしていました。

 

これは一体何なんだろうと思いました。

 

展覧会のスタッフの方の中に、80歳を超える女性の方がいました。その方は書を長年やられている方でした。その方が、初めて会う私に「作品に、自分の生き様を残したい」と話してくれました。少し大袈裟ですが、その声に人間の尊厳を伝えようとする姿が、私には見えました。

 

芸術とスポーツというツールが、人間の生の充実に果たす役割の大きさを考える一日になりました。 


おいしい家づくりのヒント

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店舗併用住宅の可能性

前職場で担当した戸塚のスタジオで開催されている作品展の案内を、クライアントだったSさんからを頂きました。さっそく、最終日に見に行ってきました。

 

戸塚のスタジオは、Sさんのお住まいの広い敷地の中にあった古い文房具店を解体し、そこに建設された建物です。Sさんのお名前を取って「千ひろば」と呼ばれ、臨床美術、バレエやミニコンサートなど多彩なプログラムで、地域の人々に親しまれる小さなコミュニティー施設になっています。

 

敷地の中にあるお庭には、多種多様な植物が植えられており、春になると一斉に花が咲き、美しい風景が広がります。恒例になった春の作品展は、そんな千ひろばの魅力が詰まったとても素敵なイベントになっています。年々、展示の内容や方法に趣向が凝らされており、今年はどのようになっているのか、楽しみでした。

中に入ると、入り口で笑顔の子供たちがお出迎え。これは今までにない新たな試みの作品です。


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家づくりの未来、未来の家づくり

地元三郷市の金属加工会社コバテックの代表・小林さんから電話がありました。

なにやら、図面作成を手伝ってほしいとのこと。

早速、打合せをしに、車で加工場を訪問しました。

 

コバテックは鉄・ステンレス・アルミを使って門扉・手すり・階段・建具などを作っている会社です。個人のお客様からの要望や自分で溶接したい方も歓迎しています。コータローと同じ志を持った会社です。

 

とても奇麗に片付いている作業場の様子が、仕事の質の高さを感じさせます。

数年前に、古く使われなくなった倉庫を借り、自分たちで片づけ加工場にしたそうです。

奥に見える空中に浮かぶ水色のボックスは、スタッフの休憩所です。

 

仕事の内容は、都内で工事中の住宅の金属建具の図面作成です。設計は、商業建築を中心に活躍中の若手アトリエ系設計事務所。工務店の担当者が入院してしまい、しばらく動けなくなってしまったそうです。取付のスケジュールは決まっており、コバテックの仕事が進まず、困っていた小林さんがコータローに助けを求めてきたという訳です。

 

なぜ、コータローと同じ設計事務所でありながら、その若手アトリエ系設計事務所は自社で図面作成しないのか、そこを考えることで、今の日本の住宅の産業構造を少し抜け出し、住み手の自由な家づくりを目指す糸口が見つかります。

 

日本の設計事務所は、お客様の要望を法律に適合した形にまとることと、その図面通り作られているか確認することが主な業務になっています。そのため、どうしたいかを表現する意匠図は作成するが、どう作るかを示す施工図は作成できない会社がほとんどです。

 

そのため、コバテックのような会社とコミュニケーションするために、工務店や建設会社を必要とします。そうなると、現場で実際ものを作る職人の声が聞こえにくい環境にいるため、いつまでたっても、施工図を書くことが出来ません。その必要もないのですから、そうなるのも当然です。

 

建物を生産するこのヒエラルキー構造は日本特有らしく、欧米では設計事務所が施工図を作成するそうです。これは、「建築」が日本にはもともとなく、欧米から学んだ概念であり、国を挙げて行ったその学習の慣習が、住宅産業にまでおよび今だに残っているのだとコータローは考えています。

 

日本では、もともと、まちの大工さんを中心とした職人集団が建物を作っていました。しかし、日本が近代国家を目指す中で建築基準法が生まれ、それに基づいて建物が生産されていくには、教育された建築士という職能が必要でした。そして、その建築士が、建築を語ったり示したりして、周りの人を教育していかないことには、何をしたらよいのか分かりません。そのため、欧米の建物をモデルにして、お手本を示していたと考えられます。

 

この時、日本の建物をモデルにしていれば、今の産業構造やまちの風景は変わっていたかもしれません。しかし、日本の建物をモデルにすると、職人や国民に、「これまでと何が違うのか」「これまで通りでは何でいけないのか」とツッコミや疑問が生まれ、建築士におうかがいを立てたり設計を依頼する必要もなくなってしまいます。そのため、これまでとは違う何かであり、建築士しか分からない何かを、建物を使い「建築」とし、共感や理解を得られる新しい建物の「美しさ」が必要だったことが想像できます。

 

しかし、今の日本で、このような正しい何かを啓蒙するような建物づくりが求められているのか疑問です。特に家づくりは、住み手の大好物で作ったご馳走のようなものの方が、皆で楽しめ、満足度も高く、幸せになれる気がします。その場合、設計者は専門知識を持ちながら、住み手の要望に耳を傾けける心と生産の現場の論理を理解できる頭を持っていることが必要です。

 

コバテックの小林さんもそうですが、今の若い職人さんは、血気盛んな昔堅気の職人のイメージはなく、コミュニケーション能力が高い仕事熱心な方がほとんどです。

 

家づくりを通して、熱いもの作りの現場に触れられることは、単に商品を購入するような感覚では得られない、充実感が得られるのではないでしょうか。ものを大切にする気持ちを育むことは、コータローのミッションの一つなのであります。ロングライフ・デザインは、意匠というよりも気持ちと生産の問題だと考えているからです。

 

コータローが、住み手のセルフビルドをお勧めしているのは、そのような理由が一つあるからです。もっと違った消費社会の味わい方がある。モノを買うことと人との出会いがセットになっている体験。人との出会いは自分との出会いなのであります。

 

三郷市とその周辺には、コバテックのようなもの作り会社がたくさんあります。

これから、コータロー自身もどんな出会いがあるか、とても楽しみです。

 

株式会社コバテック

http://koba-tech.com

セルフビルド

作業場を案内してくれている代表の小林さん


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