
早朝のバスに乗り、由布院を後にする。
友人が車で駅まで送ってくれた。お礼を言い、別れた。
彼は、家業の別荘の管理を継ぐために、逆算し、二十代から自分のキャリアを着実に歩んでいた。初めて会った時は、お互い30代前半であった。当時の私は、彼の抱えている重い現実など、知る由も無かった。私自身も、設計実績も無かった。設計事務所でも働いたことが無かった。彼が私に仕事の手伝いを依頼してきたのは、私が設計施工で仕事をしているからである。自分で設計した別荘を、長年メンテナンスしてきた彼にとって、設計しか行わない建築士では物足りないのであろう。
山道の景色を眺めながら、1時間ほどでJR別府駅に着いた。
友人とは言え、仕事を手伝うのは初めてである。具体的に設計のどの部分を手伝うのかははっきりしていない。接客しているのは彼なので、コミュニケーションを取りながら、いつもの自分の仕事を行うだけである。それで十分彼は満足してくれるだろう。