デザインの始まりについて_2

私は、リフォームに限らず、新築においても、そこにある既存の特徴を上手に活かせないだろうかと、まず考えるようにしている。それは、お客様に、そこでしか生まれない価値を提供するためである。

 

雑誌で見たお部屋をそっくりそのまま再現するというのも、一つのリフォーム方法である。しかし、それは、もともとそこにある特徴を全く無視し、活かすこともなく、消してしまうやり方である。その方法には、現状の詳細な分析というものが無い。

 

一部のお部屋だけで済むならよいが、それではバランスが悪い。結局、全てのお部屋を同じ仕様にしないと、既存部の古さが目立つことになる。それには、予算が必要である。既存の特徴を上手く活かすようなやり方を取った方が、経済的なメリットも得られるのだ。

 

三郷団地S改修では、ダイニングとリビングの天井にある欄間の鴨居を残しておいた。鴨居、周縁、長押といったライン状の部材が、お部屋の印象を引き締めていることが分かったからである。それらが無いと、新しいマンションの部屋のように、真っ白でニュートラルなお部屋になってしまう。

 

施工上も、工事が増えてしまう。鴨居を取外し、取り外した部分の下地が見えてしまうので、それを隠したり、補修するための工事が必要になる。部分補修にすると、鴨居と周縁の取り合い部の納まりの問題が発生する。また、そこだけの工事のために、色々な職人さんに来てもらわなければならない。結局、部分補修は施工面積の割に予算が掛かるので、全体的に新しい天井を貼ることになる。

 

そこにある特徴を活かさない方向に進むと、良いことが全くないのである。