お店と住宅

今回、予算の都合もあり、自分でお店の解体することにしている。

本当の理由は、どこまで壊すか見極めることと、壁、床、天井などがどのように作られているか把握するためである。

 

ある程度、予想して図面は書いているが、違っていた場合、設計を変更しなければならない。改修工事は、そのような難しさがある。

 

案の定、解体してみると、予想と違った作られ方をしていた。

明らかに、きちんとした大工さんの仕事ではない。部材の取り付け方が、普通ではないからだ。また、使っている材料も、どこかの現場のあまりか、解体したものを再利用しているようである。

 

通常、105角位の柱を910mmピッチで配置し、その間に30mm厚の間柱を設けたりする。そうなっていないのだ。土台もなければ、コンクリートの立ち上がりもない。柱材を直接タイル床に立てている。だから、柱脚が雨水を吸って腐食している。その固定に使っているスチールのアングルも錆びてボロボロである。

 

住宅ではありえない作り方である。

このようなお店は、少ない予算で早くお店を始めようとするオーナーとそのような条件で工事を引き受けてしまう工事業者の、ある意味、幸運な出会いと信頼関係で、簡単に実現してしまうのだろう。

 

新築住宅がどんどん厳しくなっていく中、小さなお店の改修工事は、法的な規制や手続きが緩いので、知識と技術がない工事業者が店舗改修工事へと進出しているのではないかと思われる。

 

お店が住宅と違うのは分かるが、長くその場所で続いていくためにの最低限の耐久性は必要であろう。しかし、お店の場合、撤退ということも考えられる厳しい世界でもある。

 

そのため、住宅のような本物志向も場合によりけりで、どちらかというと、しっかりした仮設的な作りで、表面にセンスの良い仕上げ材をバランスよく配置して、より集客に貢献するのが、お店づくりにおける設計者の役割だとも言える。