設計プロセスの主役はお客様

越谷のワインバーの打ち合わせが始まった。

建築士との設計打ち合わせは、Kさんにとって初めての体験なので、不安と期待の入り混じったお気持ちなのではと思う。

 

今回のような10坪のお店の改修工事でも、私は打ち合わせを簡易的に済ますようなことはしない。十分時間をかける。それは、設計者がお客様の声を聞き洩らすことのなく、お客様が納得しながら計画が進むようにするためである。

 

計画の始まりは、お客様の頭の中にあるイメージである。

そのイメージには、精確な寸法がないことが多い。

色々なことが実現できるという期待のもと、そのイメージは出来上がっている。

だから、設計者が図面にしてあげると、気がつくことがある。

良くも悪くも、思っていたことと違うことが見つかる。

 

今回も限られた大きさの中で、以前と違うお店の使い方を試みる。

椅子やテーブルの配置やカウンターの高さ・奥行き等は、重要なポイントである。

また、ワイン・セラーや冷凍庫といった設備機器が使いやすくレイアウトできるかも、重要なポイントである。

 

出来上がった図面を見て、お客様自身も考え始める。

思っていた通りのところ、思っていたのと違うところ、気がつかなかったところ、色々ある。

そのようなものが、目に見える形で目の前にあると、頭は自然と働きだすものなのだ。

図面で分かりにく場合は大きな模型を作る。

 

そこで生まれたお客様の声を、また聞き洩らすことなく設計に反映させる。

そして、再び目に見える形にする。

設計の打ち合わせは、その繰り返しである。

そのプロセスを端折ることはしない。

 

自分の想いが目の前で確実に形になっていくことを、お客様は感じられることであろう。そのような設計プロセスを、私は心がけている。家づくりやお店づくりの主体は、あくまでもお客様なのである。