コ―タローの店舗併用住宅

シンクロ・フードの営業担当者・Nさんが事務所に来られた。シンクロ・フードは、店舗デザイン.comというサイトを運営している会社である。

 

色々な店舗デザイン事例がそのサイトにあるので、私は以前から見ていて知っていた。Nさんは、関東エリアで店舗を設計施工できる会社がないか探していたところ、コ―タローを見つけてくれたのだ。

 

Nさんがコ―タローに興味を持った点は、店舗併用住宅の施工事例が多いことである。それは、他の会社にない特色であると、Nさんは言う。

 

店舗というと、飲食店・販売店・美容店を思い出されるが、バレエスタジオ、多目的スタジオ、絵画教室・絵画アトリエといった用途が、コ―タローにはある。店舗デザイン・comに掲載されている店舗とは、少し異なる用途であり、それがまた魅力的らしい。

 

確かに考えてみると、個性的な店舗併用住宅を作れる会社は、あまりない。店舗デザイン会社、意匠設計事務所、住宅メインの工務店、どの会社にも、ちょっとした障害があるからだ。

 

店舗を作ってくれる会社は、いくつか種類がある。しかし、開業にあたり融資を受けるとなると、設計と施工ができる会社の方が、好都合なのだ。なぜなら、計画の初期段階で、融資の提出資料である概算見積書が、必要になるからだ。その作業がスムーズにできるのは、設計と施工ができる会社に限られてくる。

 

また、店舗を設計から施工までできる会社はたくさんあるが、その会社が店舗併用住宅を作れるかというと疑問である。

 

住宅には、性能、耐久性、居住性が求められる。構造計算は当然必要で、2018年からは、外皮計算もしなければならなくなった。今後、打ち合わせの中で、光熱費や温熱環境のシュミレーションが求められる。店舗デザインとは異なる難しさが、住宅にはある。

 

コ―タローの仕事の中心は、住宅である。今まで、上記のような作業は当然の流れの中で行ってきたし、新しい取り組みの準備もしている。だから、店舗併用住宅を+αの部屋がある住宅として作ってきた。

 

バレエスタジオのある住宅(幸手のスタジオ)は、二階に大きな趣味の部屋のある住宅として設計した。

 

多目的スタジオのある住宅(戸塚のスタジオ)は、広いお庭に大きな茶室のある住宅として設計した。

 

絵画教室・絵画アトリエのある住宅(中青木のアトリエ)は、大きなリビングが複数ある住宅として設計した。

 

パン雑貨店のある住宅(塚越の家)は、まちのダイニング・キッチンのある住宅として設計した。

 

梨販売店のある住宅(東松戸の家)は、大きなリビングがもう一つある住宅として設計した。

 

コ―タローは店舗デザイナーではないのである。

 

店舗デザインは、広告宣伝業界に近い。だから、店舗デザイン会社は、コンセプトやマーケティングという言葉を使う。差別化し、売れる店とは何かを突き詰めているからだ。そして、コンセプトに沿って、内外装のデザインを決定し、PR活動や販促媒体とも連動させる。お店のあらゆる要素が、それに合う形に整えられていく。だから、店舗デザイン会社のお店づくりには隙がない。

 

しかし、この発想は、個人の方が長年温めていたお店の夢を形にするには、あまり適さないのではないか。まず、コンセプトやマーケティングという言葉が聞きなれない。やる気があって始めたにもかかわず、考え込んでしまいそうだ。

 

また、デザイナーが提案するコンセプトを認めてしまうと、コンセプトから外れてしまうアイデアは、諦めたり、変更しなくてはいけない可能性がある。デザイナーは洗練させたほうが良いという前提で行っているのだから当然である。しかし、個人でお店を始めようとするお客様は、不揃いで雑多なアイデアをたくさんお持ちであることの方が普通なのではないか。

 

私は、コンセプトをもとに整合性のとれたデザインにした方が売れるという前提を本当にそうだろうかと少し疑っている。

 

必要条件を整えるために、必要十分条件を犠牲にしているような気がするからだ。必要十分条件とは何か、それは、お客様の想い、やる気、勢い、諦めない気持ちである。ある一定以上のクオリティーがあれば、必要条件の不完全さなど、それらでいくらでも補えるのではないか。

 

私がこれまで携わった店舗のお客様は、皆、コンセプトなど語らず、始めている。

 

やりたいことが、お客様の中にしっかりある。私もコンセプトは何か?と聞いたこともない。お店のヴィジョンはお客様の中に確かにある。それは、上手く言葉で表現できず、語られたとしても、キャッチーな言葉ではないことの方が多い。コピーライターでもない訳だから、そんなことを私は期待していない。

 

むしろ、それを語る本人が、生き生きしていることが大切であり、これで良いのだと思っている。

 

コ―タローは、そんな、まちを明るく元気にしてくれる方々の力になりたい。

 

⇒店舗併用住宅

⇒店舗