やってみると見つかる自分の好み

セルフ塗装工事 ナナ・ヴァン

本日、セルフ塗装工事を、お客様であるKさんに行っていただいた。

厨房の天井を黒いペンキで塗っていただく工事である。

塗装工事は、客席の天井を塗ったことがあるので、今回で二回目である。

その甲斐あって、Kさんは一回目より慣れてきたように見える。

 

セルフ工事を取り入れている理由は、いくつかある。

一つは、お客様の努力と工夫次第でコストを抑えられる選択肢を用意してあげたいということ。二つ目は、お店や家を、もっと自分自身のものとして育て上げ、愛着を持てるプロセスを提供してあげたいということ。

大きくこの二つの理由がある。

 

セルフ工事を実際やり始めると、恐る恐る始めていたお客様が、段々コツをつかんできて、もっとこうしたいという想いが生まれてくるようで、設計者の意図と違った方向にどんどん進んでいくことがある。

 

お客様が楽しみ満足されているのでお任せしているが、実は、設計者から見ると、カチっとしたかっこい形や、繊細で微妙な色合いを、自分の肌や好みに合うように、馴染みのある違った色や形に、成形し直しているように見えている。一体、なぜなんだろうと、ずっと思っていた。

 

買ったばっかりの靴は、硬くて履き心地が悪い。また、靴だけ新しくピカピカで目立っておかしい。そこで、小さい頃、新しい靴を踏んだりねじったりしたことがあった。履き心地と見た目、この二つの違和感を自分の中で解消しようとしている。恐らく、そのような行いに近いことなのだろうと、今は理解している。

 

今回のセルフ工事は、黒く塗るというあまり個性のない消極的な工事である。しかし、工事が進むにつれて、木製のドア、カウンター天板、合板の塗装工事をご用意している。木目の浮き上がる程度や色の濃さなど、お客様の好みと関係してくる工事である。今回は、黙々と黒いペンキの塗装に励むだけのKさんが、次第にどんな自分の色を見つけるのことになるのか、楽しみである。