商いの生態系の持続可能性

先月、コータローは一般社団法人埼玉建築士会に入会しました。

 

日本建築学会に次ぐ二番目に歴史のある日本建築士会連合会に属する埼玉県の団体です。建築士賠償責任保険に加入することが一番の目的だったのですが、せっかく入会するなら、自分に合った団体が良いと思い、調べたところ、日本建築士会連合会会長が三井所清典氏だったので、埼玉建築士会にしました。

 

氏は、芝浦工業大学の構法の授業の先生でした。生産系と呼ばれる研究室を持ち、建築職人の実態調査、伝統構法の再生、街並の修景、それらを総合した街作りといったことをテーマに活動をされていました。

 

当時の私は、作ることと作られるモノとその認識の関係を、大学のカリキュラムとは別に、一人黙々と取り組んでいるような学生でしたので、氏の研究テーマの背後にある問題意識など、考える余地がありませんでした。

 

自分で作る経験のないまま行われる設計教育や建築デザイン界で取り上げられる議論に馴染めず、モノ作りとして建築を学び直したい想いがあった私は、その後、職人からキャリアを始めることにしました。職人、設計者、現場監督と建築生産の各プレイヤーを一通り経験してみて、住宅のような小規模建築物を作るには、設計施工の業務形態である工務店が、自分にとって誠実で努力のし甲斐があるように感じました。

 

工務店は、建物の品質の追求と経営のバランスを取りながら、現場に伝える情報とその伝え方の役割・効果・責任を自覚せざるを得ない立場にいます。更に、引き渡し後のアフターメンテナンスも対応し続け、自分の設計した建物が後々どのようになっていくのか一生目の当たりすることになります。

 

地球規模の持続可能性ということがテーマになり、ZEH住宅やパッシブデザインといった建物単体を省エネ化していこうとするアプローチも大切ですが、その生産の在り方を考えたとき、自分がやったことが結果として返ってくる学習回路を持った組織として、工務店の意義が再認識されるのではないかと思えるのです。

 

昨年、ある工務店向けのシンポジウムに氏が参加されていました。プレゼンテーションの中で氏は工務店の家づくりの歴史を「商いの生態系」と表現していました。家や街並を生み出す住み手と作り手の経済活動を自然界の物質循環の一部として捉えた氏ならではの表現だと思いました。

 

年末、第60回建築士会全国大会が京都で開催されます。テーマは「山とまちと木造建築」です。これからの日本の未来に向けたふさわしいテーマだと思います。私は、氏の授業に出席する学生に戻った気持ちで、同時代を生きる先輩建築士の声を記憶に焼き付け持ち帰り、これからの業務に活かしたい気持ちでいっぱいです。冬の京都は初めてなので、そこも楽しみです。

 

日本建築士会連合会 http://www.kenchikushikai.or.jp