家づくりの未来、未来の家づくり

地元三郷市の金属加工会社コバテックの代表・小林さんから電話がありました。

なにやら、図面作成を手伝ってほしいとのこと。

早速、打合せをしに、車で加工場を訪問しました。

 

コバテックは鉄・ステンレス・アルミを使って門扉・手すり・階段・建具などを作っている会社です。個人のお客様からの要望や自分で溶接したい方も歓迎しています。コータローと同じ志を持った会社です。

 

とても奇麗に片付いている作業場の様子が、仕事の質の高さを感じさせます。

数年前に、古く使われなくなった倉庫を借り、自分たちで片づけ加工場にしたそうです。

奥に見える空中に浮かぶ水色のボックスは、スタッフの休憩所です。

 

仕事の内容は、都内で工事中の住宅の金属建具の図面作成です。設計は、商業建築を中心に活躍中の若手アトリエ系設計事務所。工務店の担当者が入院してしまい、しばらく動けなくなってしまったそうです。取付のスケジュールは決まっており、コバテックの仕事が進まず、困っていた小林さんがコータローに助けを求めてきたという訳です。

 

なぜ、コータローと同じ設計事務所でありながら、その若手アトリエ系設計事務所は自社で図面作成しないのか、そこを考えることで、今の日本の住宅の産業構造を少し抜け出し、住み手の自由な家づくりを目指す糸口が見つかります。

 

日本の設計事務所は、お客様の要望を法律に適合した形にまとることと、その図面通り作られているか確認することが主な業務になっています。そのため、どうしたいかを表現する意匠図は作成するが、どう作るかを示す施工図は作成できない会社がほとんどです。

 

そのため、コバテックのような会社とコミュニケーションするために、工務店や建設会社を必要とします。そうなると、現場で実際ものを作る職人の声が聞こえにくい環境にいるため、いつまでたっても、施工図を書くことが出来ません。その必要もないのですから、そうなるのも当然です。

 

建物を生産するこのヒエラルキー構造は日本特有らしく、欧米では設計事務所が施工図を作成するそうです。これは、「建築」が日本にはもともとなく、欧米から学んだ概念であり、国を挙げて行ったその学習の慣習が、住宅産業にまでおよび今だに残っているのだとコータローは考えています。

 

日本では、もともと、まちの大工さんを中心とした職人集団が建物を作っていました。しかし、日本が近代国家を目指す中で建築基準法が生まれ、それに基づいて建物が生産されていくには、教育された建築士という職能が必要でした。そして、その建築士が、建築を語ったり示したりして、周りの人を教育していかないことには、何をしたらよいのか分かりません。そのため、欧米の建物をモデルにして、お手本を示していたと考えられます。

 

この時、日本の建物をモデルにしていれば、今の産業構造やまちの風景は変わっていたかもしれません。しかし、日本の建物をモデルにすると、職人や国民に、「これまでと何が違うのか」「これまで通りでは何でいけないのか」とツッコミや疑問が生まれ、建築士におうかがいを立てたり設計を依頼する必要もなくなってしまいます。そのため、これまでとは違う何かであり、建築士しか分からない何かを、建物を使い「建築」とし、共感や理解を得られる新しい建物の「美しさ」が必要だったことが想像できます。

 

しかし、今の日本で、このような正しい何かを啓蒙するような建物づくりが求められているのか疑問です。特に家づくりは、住み手の大好物で作ったご馳走のようなものの方が、皆で楽しめ、満足度も高く、幸せになれる気がします。その場合、設計者は専門知識を持ちながら、住み手の要望に耳を傾けける心と生産の現場の論理を理解できる頭を持っていることが必要です。

 

コバテックの小林さんもそうですが、今の若い職人さんは、血気盛んな昔堅気の職人のイメージはなく、コミュニケーション能力が高い仕事熱心な方がほとんどです。

 

家づくりを通して、熱いもの作りの現場に触れられることは、単に商品を購入するような感覚では得られない、充実感が得られるのではないでしょうか。ものを大切にする気持ちを育むことは、コータローのミッションの一つなのであります。ロングライフ・デザインは、意匠というよりも気持ちと生産の問題だと考えているからです。

 

コータローが、住み手のセルフビルドをお勧めしているのは、そのような理由が一つあるからです。もっと違った消費社会の味わい方がある。モノを買うことと人との出会いがセットになっている体験。人との出会いは自分との出会いなのであります。

 

三郷市とその周辺には、コバテックのようなもの作り会社がたくさんあります。

これから、コータロー自身もどんな出会いがあるか、とても楽しみです。

 

株式会社コバテック

http://koba-tech.com

セルフビルド

作業場を案内してくれている代表の小林さん


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